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【和訳】ICOのガイドライン(スイス金融市場監査局)より

      2018/04/21

本記事は、スイスの金融市場監査局が2018年2月16日に出した、ICOについてのガイドラインを和訳したものです。

内容は、ICOにおいて発行されるトークンは、「決済手段としてのトークン」、「ユーティリティとしてのトークン」、「資産としてのトークン」の3つの性質を持ちうるとした上で、それぞれがどのような場合に「有価証券」および「マネーロンダリング規制」などに該当するかを整理したものです。

今後のICOの規制のあり方を考えるにあたって有意義な情報になると判断したため和訳しました。

誤訳などがあった場合はご指摘いただければ幸いです。

以下、翻訳です。

目的

ICOにおいて、投資家はICOの企画者に、通常は暗号通貨という形で、資金を送金します。その代わりに、ブロックチェーンによって管理されているコインやトークンを受け取ることになります。それらのコインやトークンは、分散された形で、そのICOのためにつくられたブロックチェーンもしくは既存のブロックチェーン上で発行されます。

2017年の9月29日に公開した「FINMA’s Guidance 04/2017」では、FINMAはイニシャル・コイン・オファリング(ICO)についての立ち位置を示しました。それから、既存の金融市場規制が適用されるかもしれない分野について特筆しました。

本ガイドラインでは、ICOに関する監督や規制のフレームワークについての問い合わせに対して、FINMAがどのように対応するかという情報を市場参加者に提供します。

問い合わせにあたって

過去数ヶ月間にICOプロジェクトが急激に増加する中で、FINMAは数え切れないほどの問い合わせを市場参加者から受けています。それらの問い合わせは、ICOに対する金融市場規制の適用可能性に関するものや、免許の必要性の有無を問うものです。

FINMAがこれらの問い合わせに迅速かつ正確に対応できるようにするために、問い合わせに際しての、最低限の情報要件を付録に記載しています。それは、プロジェクトの概要や、トークンの設計と配布方法、潜在的なセカンダリーマーケットにおけるトレーディングの可能性に関する詳細な情報といったものです。 FINMAが問い合わせに対して有意義な対応をするには、ICO主催者が、予定されているICOの条件を明確に定義し、文書化する必要があります。

(中略)

個別の問い合わせを評価する際に適用される原則

「FINMA’s Guidance 04/2017」に記載したように、ICOが既存の金融市場規制の対象となるいくつかのパターンがあります。 現在、ICO固有の規制要件は存在しません。

ICOには、実に多様な法的考慮を必要とするため、ICOに関連する判例法や一貫した法律の教義というものは存在しません。実に広範な種類のトークンやICOの設定があるので、一般化することは不可能なのです。個々のケースごとに、全体的に状況を考慮する必要があります。(本ガイドラインに添付されている)ICO企画者が問い合わせにあたって提出すべき最低限の情報要件は、これらを判断するにあたっての基礎となるものです。FINMAは、特に既存の規制を迂回しようとする兆候がある場合には、ICOの根底にある経済的目的に基づいてその評価を行います。

ダイナミックなマーケットと多くの市場参加者からの高い関心を考慮して、FINMAは特定の問い合わせに対する回答の原則を明確にするために、これらのガイドラインを公開しています。

トークンの種類について

ICOおよび発行されるトークンに関する、普遍的に認識されている種類分けというものは、スイスにも国際的にも存在しません。FINMAは、トークンの基本的な経済機能を分類するための、独自のアプローチをしています。

決済手段としてのトークン: 決済手段としてのトークン(暗号通貨)は、商品やサービスを購入するための決済手段として、または金銭や価値の移転の手段として、現在または将来使用されることを意図したトークンです。暗号通貨は、発行者に対していかなる請求も行いません。

ユーティリティとしてのトークン: ユーティリティとしてのトークンは、ブロックチェーンを基盤とするインフラの上に成り立っているアプリケーションまたはサービスにデジタルにアクセスするためのトークンです。

資産としてのトークン: 資産としてのトークンは、発行者に対する債権の持分あるいは株式の持分を示すものです。資産としてのトークンは、例えば、将来の企業収益または将来の資本移動における持分を約束します。したがって、その経済的機能の面では、これらのトークンは株式、債券またはデリバティブに類似しています。物理資産をブロックチェーン上で取引できるようにしたトークンもこのカテゴリに分類されます。

これらのトークンの分類は、重複する場合も考えられるものです。資産としてのトークンや、ユーティリティとしてのトークンは、決済手段としてのトークンにも分類することができます。これをハイブリッド・トークンと呼びます。このような場合、要件が付け加えられていきます。言い換えれば、このトークンは有価証券と決済手段の両方であるとみなさるということです。

一部のICOでは、資金調達の時点ですでにトークンが流通しています。これは、既存のブロックチェーン上で行われるものです。他のタイプのICOでは、投資家には将来、ある時点でトークンを受け取ることができる見通しだけが提供され、トークンまたはその基盤となるブロックチェーンは未だ開発されていません。こうしたものはプレファンディングと呼ばれています。プレセールというものもあります。この場合、投資家はトークンを受け取りますが、そのトークンは、後日、他の異なるトークンを取得するためのトークンという位置づけになります。

証券としてのトークンの分類

証券規制は、市場参加者が、株式や債券などの投資に関する意思決定を、信頼性が高く、確立された情報に基づいて行うことができることを目的としています。さらに、取引は公正で信頼性があるべきですし、効率的な価格が形成されるべきです。

FINMAは、トークンが以下の法的定義に基づいて有価証券として適格かどうかについて判断を下します。金融市場基盤法(FMIA)に基づく意味での証券は、標準化された有価証券、派生商品および中間証券です。それらは標準化された大量の取引に適したものです。言い換えると、証券は、特に個々の取引相手に対して作成されていない限り、同じ構造および金額で公開されるか、20人以上の顧客が存在しています。

無券面証券は、共通の法的根拠(定款/発行条項)に基づき、多数発行され、一般に同一である権利として定義される。義務のコード(CO)の下では、正式な要件は、発行された無券面証券と権利を持つ者の数と単位の詳細が記録されたブックを保持することだけである。

これは、ブロックチェーン上でデジタルで行うことができるものです。

決済手段としてのトークン(暗号通貨)

決済手段としてのトークン(暗号通貨)が有価証券に該当するかどうかに関しては、様々な法的意見があります。すべての種類のトークンを有価証券とみなすべきであると主張している人もいれば、それには同意しない人たちもいます。決済手段としてのトークンは、決済手段として機能するようにデザインされており、従来の証券とは機能的に類似していないことを考え、今後ともFINMAは、決済手段としてのトークンを有価証券としては扱いません。

これは、FINMAの現在までの実践(例えば、BitcoinやEtherへの態度)とも一致しています。 決済手段としてのトークンが、新しい判例法または法律によって有価証券として分類される場合、FINMAはそれに応じてその慣行を改正します。

ユーティリティとしてのトークン

ユーティリティとしてのトークンは、唯一の目的がアプリケーションまたはサービスにデジタルなアクセス権を与えることである場合、およびユーティリティとしてのトークンが問題とされる時点において、実際にこの方法で使用できる場合、有価証券としては扱われません。このような場合、基本的な機能はアクセス権を付与することであり、有価証券の典型的な特徴である資本市場との接続という機能は欠落しています。

ユーティリティとしてのトークンが投資目的も持つ場合、または発行時点で投資目的しか有していない場合、FINMAはそのようなトークンを有価証券として扱います(つまり、資産トークンと同じ方法で扱うということです)。

資産としてのトークン

FINMAは、資産としてのトークンを有価証券として扱います。資産としてのトークンは、それが無券面化された証券を表しており、大規模な取引に適するように標準化されていた場合には、有価証券の要件に該当します。

また、資産としてのトークンは、それがデリバティブを表す場合(すなわち、付与される権利の価値が原資産に依存する場合)で、大規模な取引に適するように標準化されている場合にも、証券に該当することとなります。

ICOにおけるプレファイナンスやプレセールのフェーズであるという場合、すなわち将来のトークン取得に対する権利であるという場合、これらの権利もまた、大規模な取引に適するように標準化されている場合には、資産としてのトークンと同様に、証券として扱われます。

証券として扱われる場合の法的影響

上記のガイドラインに基づき、ICOのトークンが証券に該当するという結論にFINMAが達した場合、それらには証券規制が適用されます。

証券取引法(SESTA)においては、自己発行の無券面化された証券の帳簿への記入は、その無券面化された証券が金融市場基盤法(FMIA)の意味で証券として適格であったとしても、本質的には規制されていません。第三者への証券の公募についても同様です。

しかしながら、金融市場基盤法(FMIA)によって定義されたデリバティブ商品を創出し、プライマリーマーケットにおいて公募・売出することは、規制されています。(SESTO第3条第3項)。また、プライマリーマーケットにおいて、証券に該当する第三者のトークンの引受および公募・売出する行為は、事業として実施された場合、ライセンスが必要な活動にあたります(SESTO第3条2項)。

株式または債券に類似したトークンの発行にあたっては、スイスの義務コード(Swiss Code of Obligations)に基づいて、目論見書を必要とする場合もあります。FINMAはこの分野における直接の責任は持っていませんが、ICOの主催者がこれらの要件を明確にすることを期待しています。金融庁法案(FinSA)によると、目論見書の要求事項は法の一部となっています(金融庁法案 第37条)。スイスの義務コードおよびFinSAは、いくつかの異なる例外および免除を規定しています。

預金としての分類

銀行法の第一の目的は、公衆、特に銀行債権者とその預金を保護することにあります。トークンの発行は、ICOの主催者に対して返済を請求できる権利とは通常関係がないため、そのようなトークンは預金の定義に含まれません。この範囲では、銀行免許を取得する必要はありません。しかし、負債資本性を有する負債(例えば、定額の利子を付して資本を返すことを約束するようなもの)がある場合、集められた資金は預金として扱われ、例外が適用されない限り、銀行法により免許を取得する必要が生じます。

集合投資スキーム法の適用可能性

集合投資スキーム法の目的は、投資ファンド商品の投資家を保護し、投資ファンド商品の市場が適切に機能するようにすることです。

集団投資スキーム法の規定は、ICOの文脈で受け入れられた資金が、第三者によって管理されている場合にのみ関係します。

マネーロンダリング防止法の適用可能性

マネーロンダリングとテロ資金供与から金融システムを保護することが、マネーロンダリング防止法(AMLA)の目的です。決済サービスを提供するか、決済手段を発行または管理する者は、AMLAの対象となる財務仲介人に該当します(AMLA第2条第3項b)。

決済手段としてのトークンを発行する行為は、トークンが技術的にブロックチェーン上で所有者を移転できるのであれば、この規則の対象となる決済手段の発行に該当します。これは、ICOの時点で該当する場合もあれば、後日に該当してくる場合もあるでしょう。

ユーティリティとしてのトークンの場合、トークンを発行する主な目的がブロックチェーン技術を用いた非金融アプリケーションにアクセス権を与えることである限りにおいては、マネーロンダリング防止規制は適用されません(AMLA 第2条2項第3項、FINMA Circ。11/1「AMLAによる金融仲介」第13項以下参照)。

AMLAへの準拠

マネーロンダリング防止規制は、トークンを所有することとなる者の身元を証明する必要性を含む、さまざまなデュー・デリジェンスの必要性を生じさせます。また、自己規制機関(SRO)に加盟するか、FINMAの監督を直接受ける義務も生じます。

これらの要件は、金融仲介機関を通じて資金を受け入れることで実現できます。その場合、利用する金融仲介機関は、すでにスイスのAMLAの対象となっており、主催者を代行してデュー・ディリジェンスの要件を相当に満たすものでなければなりません。このような状況では、ICO主催者自身がSROに加盟したり、FINMAから直接ライセンスを取得する必要はありません。

現在のFINMAの監督の下では、暗号通貨と法定通貨の交換、もしくは暗号通貨同士の交換には、AMLA第2条3項が適用されます。トークンの所有者を移動させるサービス(暗号通貨の送金サービス)を提供する場合にも、そのサービス提供者がユーザーの秘密鍵を管理している場合には、同様の規制が適用されます。

その他

以下のテーブルに、主な要素を整理しています。

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