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リーマンショック前の水準に達した家計債務は景気崩壊をシグナルしているのか

      2018/04/14

アメリカの家計債務がリーマンショック以前の水準に達しているので、アメリカの好景気は薄氷だというコラムがロイターにあがっていました。

たしかに、アメリカの家計債務は13Tドルほどに達しており、これはリーマンショック前の水準を上回るレベルです。

そこで、今回はこの家計債務がどのくらい景気に影響を与えうるのかを掘り下げてみたいと思います。

好景気はどのように崩壊するのか

本題に入る前に、まずは景気の循環について、触れてみたいと思います。

借金はお金の量を増やす

まずは、銀行の信用創造の効果を振り返ります。

経済の授業で習ったことがあるかと思いますが、銀行がお金を借金として貸し出すと、実はお金の量が増えます。

たとえば田中さんが100万円を持っていて、銀行に預けたとします。この場合、お金の量は100万円です。

次に、銀行がこの100万円を佐藤さんに貸し出したとします。佐藤さんは受け取った100万円を銀行に預けます。すると、銀行には田中さんの100万円と佐藤さんの100万円が預けられていることになります。100万円のお金が200万円に増えてしました。

もちろん、ただお金が増えるわけはなく、佐藤さんが借りた借金も100万円増えているわけなので、お金が200万円、借金が100万円で、相殺すると元の100万円のままです。

しかし、佐藤さんが借金を返すまでの間、世の中のお金は増えていることになります。

このように、銀行はお金の貸し出しを通じて、世の中のお金の量を増やします。これを信用創造と呼びます。

好景気では借金が増える

好景気では、借金をする人が増えるため、世の中のお金の量が増えていきます。

これは商売をする人間の立場を考えてみると分かります。景気がよくて商品がたくさん売れるのなら、設備投資をして生産を増やしたり、仕入れる商品の量を増やしたりします。

また、景気がいいと消費者も財布の紐を緩めて、クレジットカードで買い物をしたり、ローンを組んで車や家を買ったりします。

好景気では、物価もインフレ気味で上がっていくので、借金のリスクも減ります。たとえば土地の値段が上がっていくなら、借金をして不動産を買ったとしても、いざとなったら不動産を売って借金を丸ごと返すことができます。値上がり分が利益として残る可能性すらあるでしょう。

このようにして、好景気では一般的に借金は増えていきます。

金利が上がると借金が返せなくなる

さて、好景気は永遠に続くわけではありません。

ここで大きな役割を担うのは金利です。

先ほど、物価もインフレ気味に上がっていくので、借金のリスクが低くなると述べました。

しかし、横着な借金が増えて、物価の上昇に歯止めが効かなくなると、経済はハイパーインフレに達してしまいます。ハイパーインフレとは、簡単にいえばペースが鬼早いインフレです。めちゃくちゃインフレすると。

たとえば、第一次世界大戦後のドイツ帝国では、一兆倍のハイパーインフレを経験したといいます。物価がみるみる上がっていくと、お金の価値がなくなります。今日は380円で牛丼を食べられたのに、明日には1,800円ないと牛丼が食べられないとなると、誰もお金を信用しなくなるでしょう。お金を手放して物に変えようとする人が増えれば増えるほど、需給の関係から物価はさらに上がります。

当時のドイツの混乱がウィキペディアに載っていたので引用します。

第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレでは、酒場の客は、値段が上がらないまだ早い時間のうちに、数杯のビールを一度に注文したとされる[19]。

そこで、中央銀行はハイパーインフレを防ぐために、景気が良くなってくると金利を少しづつ上げていきます。

金利が上がると、借金をするコストがあがるので、借金をしにくくなります。こうして、経済が一気に拡大しすぎないように牽制するわけです。

好景気の終盤では、景気が良くなり、企業が好決算を出し、物価や賃金が上がり、中央銀行が歯止めをかけるために金利を上げる。しかし、まだまだ景気は良く、さらに賃金や物価は上がるので、中央銀行はさらに金利を上げる。そういった、好景気と金利引き上げのラリーが起こります。

ここに来て、やがて、気がつくと金利が上がりすぎて、借金をしていた人たちがお金を返せずにデフォルトしはじめるという事態が発生します。

そうすると、お金を返すために担保に入れていた不動産や株といった資産が売りに出始めて、資産の価格が下がります。

資産の価格が下がると、資産を売却しても借金を返すことが難しくなり、さらにデフォルトが増えます。

こうして、倒産や破産と、資産価格の下落か、雪崩のように起き始めます。これが信用収縮もしくはミンスキーモーメントと呼ばれる現象です。

銀行の信用創造の部分で触れましたが、世の中のお金の量が単に増えていたわけではなく、その裏には同じだけの借金が増えています。その借金が猛威を振るうのは、利子、つまり金利が十分に上がり、みんなが利子や返済分を払えなくなったときなのです。

今のアメリカの借金の影響度合い

さて、長くなりましたが本題に入りたいと思います。

ここまで読むと、単純に家計債務がリーマンショック前の水準まで増えたからといって、明日にでもリーマンショックが再来するというわけではないことはお分かりいただけたと思います。

極論を言ってしまえば、金利がないのなら、借金がどれだけ増えても、利払いはありませんから、好景気はまだまだ続くでしょう。

この積み上がった家計債務の重みを決めるのは金利だということです。

リーマンショック前の状況

そこで、リーマンショック前の状況をざっくりとですが、ミクロにブレークダウンしてみたいと思います。

まず、リーマンショック前の家計債務の額は今と同じ13Tドルほどです。また、この頃の世帯数は1.12億世帯ほどなので、平均すると一世帯あたり、およそ116,500ドルの債務があったと考えることができます。

また、リーマンショック前の長期金利は4.5%ほどでした。

実際の借入時は、長期金利以上の金利がつく可能性が高いですが、概算のため、ここでは長期金利を使いたいと思います。

すると、一世帯が一年間に支払う金利の額は、ざっくりと平均を計算すると、116,500ドル×4.5%で5,242ドル、当時のドル円のレートは120円程ですので、円に直すと63万円程であったということになります。

年間に63万円ですから、月に5万円ちょっとです。これが前回、景気が崩壊したときの水準ということになります。

月に5万円以上の利子はたしかに厳しいですよね。利払いだけでも大変で、なかなか元本が減らない気がします。

現在(2017年12月)の状況

続いて、現在の状況を見てみます。

家計債務の額は同じ水準で13Tドルほどですが、世帯数は少し増えていますが、およそ同じで1.12億世帯としておくと、一世帯あたりの平均的な債務の額は、同じく116,500ドルということになります。

また、現在の長期金利は2.3%なので、年間の利払いは約2,680ドル、ドル円110円で円に換算すると年間で約32万円、月々で2.7万円くらいです。

こうしてみると、先ほどのリーマンショック前の状況と比べると、随分と少ないことが分かります。これなら、今のところはまだ返済を頑張れるじゃないかという気がします。

ということで、今回は長期金利がずんずんと上がらなければ、まだしばらくは持ちこたえられるのではないかという結論となります。

金利に注目

今のところは大丈夫じゃないかといいつつも、借金が増えてることには違いないので、金利の上昇には注意が必要です。

基本的にはFRBの利上げが要注意なのですが、短期金利を引き上げても、長期金利が上がらない状況で、直近はイールドカーブがフラット化しています。

イエレン議長は、量的緩和後のバランスシートを圧縮するにつれて、長期金利も立ってくるという見解を示していたので、その通りになるか要注目です。

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