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徹底解説!ユニットエコノミクスとは何かが丸わかり。

      2017/10/19

スタートアップ周りにいると、「ユニットエコノミクス」という単語をよく聞くと思います。

ユニットエコノミクスは、単純なPL(損益計算書)的な考え方を脱却して、サービスを飛躍させるために、とても大切な概念です。

ということで、さっそくユニットエコノミクスとは何ぞやという解説をしてみたいと思います。

ユニットエコノミクスの前に

「さっさと教えんかい!」と言われてしまいそうですが、ユニットエコノミクスの前に、まずは3つの指標を解説させてください。

解約率、ARPU、ライフ・ライム・バリューの3つです。

解約率

解約率とは

解約率(またの名をチャーンレートといいます)とは、使っていたユーザーがどのくらい解約してしまうかという割合を示す指標です。

解約率をどのスパンで見るかというのは、サービスによって異なりますが、たとえばネットフリックスのような月額課金サービスであれば、月次の解約率を見るのが一般的でしょう。

解約率の計算式

とある月額課金サービスAがあり、今月、約100人がこのサービスに課金をしていたとします。

ところが、そのうち13人が月末にはサービスを解約してしまいました。

この場合の解約率は当然13%ですね。

解約率 = 月末の解約者数/月初の利用者数

解約率についての考え方

解約率についての考え方ですが、当然、低ければ低いほど良いということになります。

解約率が低いサービスのことを「スティッキーなサービスだ」と言ったりします。

スタートアップの序盤においては、スティッキーなサービスであることが非常に重視されます。

なぜなら、後々ユーザーを獲得していくにあたって、そのうち、どのくらいのユーザーが使い続けてくれる、あるいはお金を払い続けてくれるかによって、成長の効率が大きく変わってくるからです。

いま、解約率が10%のサービスと20%のサービスを考えてみましょう。どちらも、月に100人ずつ利用者を集めていきます。

まずは、解約率が10%の場合の半年間のユーザー数の推移です。

単位 M1 M2 M3 M4 M5 M6
ユーザー数 (人) 100 190 271 344 410 469
新規 (人) 100 100 100 100 100 100
既存 (人) 0 90 171 244 310 369
解約率 (%) 10% 10% 10% 10% 10% 10%
解約者数 (人) 10 19 27 34 41 47

続いて、解約率が20%の場合の推移を同じく見てみます。

単位 M1 M2 M3 M4 M5 M6
ユーザー数 (人) 100 180 244 295 336 369
新規 (人) 100 100 100 100 100 100
既存 (人) 0 80 144 195 236 269
解約率 (%) 20% 20% 20% 20% 20% 20%
解約者数 (人) 20 36 49 59 67 74

解約率が10%の場合と20%の場合では、半年後に100人もユーザー数が違ってくることが分かります。

これが月額2,000円のサービスであれば、既に月ごとに200,000円の売上の差が開いたことになります。

ちなみに、2年後までのユーザー数の推移は、以下のグラフのようになります。

解約率を下げることの重要性が伝わるグラフだと思います。

ARPU

続いて、ARPUです。

ARPUとは

ARPUとは、Average Revenue Per Userの略で、日本語で書くと、顧客一人あたりの平均売上になります。

こちらもサービス形態にもよりますが、月次で見ることが多いと思います。

ARPUの計算式

ユーザー課金モデルの場合

たとえば月額2,000円のサービスであれば、ARPUは2,000円です。

では、3つのプランが用意されている場合はどうでしょう。

たとえば、月額500円のライトプラン、月額1,500円のスタンダードプラン、月額3,900円のプレミアムプランが用意されているとしましょう。

それぞれの利用割合は30%、50%、20%だとします。

この場合、ARPUはいくらになるでしょう。

(500円×30 + 1,500円 × 50 + 3,900円×20)/ 100 = 1,680円ですね。

広告モデルの場合

マネタイズの方法が、ユーザー課金モデルではなく、広告によって収入を得ている場合には、広告収益をユーザー数で割ることで、ARPUを求めることができます。

たとえば、今月のユーザー数が100万人で、広告収入が50万円の場合、ARPUは0.5円だということになります。

ARPUについての考え方

ARPUについては、これも当然ながら、高いほうが良いです。

ただし、月額料金が高すぎると、解約率が上昇してくる可能性が高いため、適切なプライシングが出来ていれば良いでしょう。

広告モデルの場合は、クリック率を高めたり、配信される広告を最適化していくことで、ARPUを上げることが出来ます。

ライフ・タイム・バリュー

最後にライフ・タイム・バリューを説明します。

ライフ・タイム・バリューとは

ライフ・タイム・バリューは、スタートアップ以外でビジネスを学ぶ方も、よくご存じなのではないでしょうか。

たとえば、月額1,000円のサービスに課金してくれる顧客は、何も1,000円しか落とさないわけではありません。来月もその次の月も1,000円を落としてくれるわけです。

月次の損益計算を見て、黒字だけにこだわっていると、このユーザーを獲得するために1,000円までしかお金を使うことが出来ません。

しかし、ライフ・タイム・バリューの概念を知ることで、さらにお金をかけてユーザーを獲得することができるようになります。

ライフ・タイム・バリューの計算式

ライフ・タイム・バリュー(LTV)の計算式は、驚くほどにシンプルです。

LTV = ARPU ÷ 解約率

これだけです!

ただし、ARPUと解約率の期間は合わせるようにしてください。

たとえば月次のARPUを使うなら、解約率も月次の解約率を使います。

ARPUが500円、解約率が8%のサービスを使うユーザーの、平均的なライフ・タイム・バリューはいくらでしょう?

LTV = 500円 ÷ 8% = 6,250円ですね!

もし金融業界の方でしたら、「あれ?将来のキャッシュフローは割引かなくていいの?」と思われるかもしれません。

実際は割り引いたほうが正確な値が出ると思われますが、スタートアップの隆盛期というのは、得てして低金利なことが多いので、いったんは横に置いておきましょう。

ライフ・タイム・バリューについての考え方

さて、ライフ・タイム・バリューも当然ながら、高いほうが良いということになります。

しかし、上述の計算式を見ると、ライフ・タイム・バリューに影響を与える数字は、結局のところ、解約率とARPUしかないということが分かります。

解約率を下げて、ARPUを上げることで、ユーザーのライフ・タイム・バリューを上げることが出来るようになります。

ユニットエコノミクスの解説

さて、いよいよユニットエコノミクスの解説に入っていきます。

ユニットエコノミクスとは

ユニットエコノミクスというのは、ユーザーを一人獲得したときに、儲かっているのか、損しているのかという概念です。

たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

解約率は20%、ARPUは500円のサービスで、ユーザーを一人獲得するのに広告費を2,000円使っているとします。

この場合、ずばり儲かっているのでしょうか?損しているのでしょうか?

ユニットエコノミクスの計算式

それでは、実際にユニットエコノミクスを計算していきたいと思います。

解約率が20%、ARPUが500円なので、ユーザーのライフ・タイム・バリューは500円 ÷ 20%で2,500円ですね。

ということで、顧客獲得単価が2,000円だとしても、一応は得をしているということになります。

ただし、あまり効率良く稼いでいるとは言いにくそうです。

ユニットエコノミクスについての考え方

まずは大原則として、ユニットエコノミクスについては、もちろんプラスである必要があります。

まだマネタイズをしていないといった特殊な状況においては、ユニットエコノミクスがマイナスでも許されることはあるでしょうが、基本はプラスになるように、顧客獲得単価を調整していきます。

健全なユニットエコノミクスは、ライフ・タイム・バリューが獲得単価の3倍以上だと言われています。

たとえば、ライフ・タイム・バリューが2,500円なのであれば、約800円ほどでユーザーを獲得すべきだということになります。

なぜスタートアップではユニットエコノミクスに注目するのか

最後に、なぜスタートアップではユニットエコノミクスに注目するのかという話をしたいと思います。

成長速度をあげることができる

スタートアップでは、何よりも成長することが求められます。スタートアップ企業が多額の資金を調達するのも、お金を調達して、成長に投資するためです。

スタートアップにおいては、黒字を出しながら、ゆっくりと成長するのではなく、赤字を出しながら、せっせと成長することが求められるのです。

ユニットエコノミクスという考え方を知ると、ユーザーの獲得単価をあまりに低く抑えることなく、適切に支出することができます。

月次の損益ばかりを気にしていると、月額500円のサービスであれば、ユーザーを獲得するためには500円までしか広告費を払えないといった話になりかねません。

しかし、ユニットエコノミクスを知っておくことで、800円、1,000円と支出して、ユーザーを獲得していくことが出来ます。従来であれば獲得できなかったユーザーまで獲得できることが可能になれば、成長はさらに早まります。

赤字企業の中での優劣が分かる

スタートアップというのは、大体が赤字です。

そのため、PERやROEといった、成熟した企業の価値を測るための手法を用いることは出来ません。

しかし、投資家が投資をする上では、優れたサービスを提供していて、後々儲かる企業を判別できなければいけません。

そのための指標のひとつがユニットエコノミクスなのです。

ユニットエコノミクスが健全な企業であれば、お金を投資してユーザーを獲得しても、そのお金は後々回収することができます。しかし、ユニットエコノミクスがマイナスのサービスを提供する企業であれば、ユーザーを獲得するために使ったお金は回収できないことが見えているわけです。

そのため、スタートアップにおいては、多額の資金を調達して広告宣伝費に投入する前に、まずはユニットエコノミクスを健全な値まで持っていく必要があります。

 - スタートアップの科学, 事業企画