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完全競争市場で格差が拡大する理由

   

今日は、安田洋祐先生のお話を聴いてきたのですが、その中でも、完全競争市場で格差が拡大する理由についての仮説が面白かったので紹介します。

以下のスライドの内容ですので、スライドをもとに説明します。

完全競争市場とは

まず、はじめに完全競争市場とは何かということを再確認しておきます。

金融大学さんの説明を引用します。

完全競争市場とは、たくさんの生産者と消費者によって、自由な競争が行われる市場のことをいいます。

完全競争市場は、市場メカニズムが働く市場です。

完全競争市場では、(1)市場に多数の参加者(生産者や消費者)がいること、(2)財(商品)の質が同じであること、(3)財に関する情報(価格や特性など)を参加者がもっていること、(4)市場への新規参入や撤退が自由であること、という4つの条件を満たすと仮定しています。

金融大学「完全競争市場」

つまり、完全競争市場には、以下の条件があります。

・参加者が多数(誰も単独で価格決定能力を持っていない)
・商品の質が同じ
・市場の参加者の中で情報対称性がある
・市場への新規参入と撤退が自由

この状況下では、需要と供給の関係によって価格が発見されます。アダム・スミスが言うところの「神の手によって導かれる」という状態です。

完全競争市場におけるマッチング

完全競争市場では、需要と供給のバランスによって価格が発見されると書きました。このマッチングの特徴を見つめ直してみたいと思います。

価格の発見

以下のような市場参加者が存在する市場を仮定します。

買い手側の参加者は、ある商品に対して、10ドル、8ドル、6ドル、4ドルのプライスを提示できます。売り手側の参加者は、その商品を作るためのコストが3ドル、5ドル、7ドル、9ドルのため、それ以上の価格で売る必要があります。

この場合、完全競争市場では以下のように価格が決定されます。

ここでは、6ドルから7ドルの間で価格が決定されますが、今回は6.5ドルだと仮定しましょう。

余剰利益の最大化

この場合、各参加者は以下のように余剰利益を得ることになります。

さて、ここではB1とB2、S1とS2が取引に参加し、B1は3.5ドル、B2は1.5ドル、S1は3.5ドル、S2は1.5ドルの余剰利益を得たことになります。

これらの和は10ドルです。余剰利益が最大化され、10ドルの余剰利益が生まれたということです。

取引参加者の最少化

ここで注目したいのが、取引参加者数です。

B3、B4は6.5ドルでは商品を購入できないため、取引には参加できませんでした。

また、S3、S4は商品の提供コストが6.5ドルを上回るため、取引に参加できませんでした。

つまり、社会の余剰利益は最大化されましたが、取引参加者は8人のうち4人に限られたということです。

調整された市場におけるマッチング

限定されたマッチング

次に、完全競争市場ではなく、マッチング相手が限定された市場を考えてみます。

ここで想定するのは分散された4つの市場で、B1とS4、B2とS3、B3とS2、B4とS1がそれぞれの参加者です。

商品の価格はそれぞれのペアで、売り手と買い手の中間価格で決定するとします。

余剰利益の合計は減る

この場合、それぞれの余剰利益は全て0.5ドルになります。

このとき、余剰利益の合計は4ドルにすぎません。先ほどの完全競争市場の10ドルと比較すると、半分にも満たないことになります。

取引参加者が増える

一方で、市場参加者は8人のうち8人全員です。

先ほどの4人と比べると、倍になっており、全員が少しづつですが利益を得ることが出来ています。

格差を抑える方法

所得の再分配

理論上、最も良いのは、完全競争市場で価格を決定した上で、政府が税金と社会福祉を通じて、所得を再分配することです。

こうすることで、全員が最大化された余剰利益の恩恵に預かることができます。自由主義者のベーシックインカム導入の議論は、これに近いものがあるでしょう。

取引に参加できないという意味で、社会から疎外される人たちは出てきますが、富は最大化された上で、分配によって格差が解消している状態です。

マッチング方法の工夫

もう一つが、先ほどの例であげたように、完全競争市場ではない形でマッチングを行う方法です。

これは具体的に世の中にすでに存在しているだろうと安田先生は述べられており、一例として労働市場におけるリクルートなどの転職支援企業の存在をあげられました。リクルートは社会の余剰利益の最大化よりも、マッチング件数の最大化(とそれに伴う手数料の最大化)を目指していると考えられるからです。

このような役割を果たしているものを見つけたり、デザインしていくことは、格差の解消に役立つと考えられます。

 - 経済