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【レビュー】『Hot Pepper ミラクル・ストーリー』を読みました。

      2017/11/26

『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』を読みました。

Hot Pepperのミラクル・ストーリー

『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』は、文字通り、Hot Pepperをリクルートのモンスター事業に育て上げたミラクル・ストーリーの裏側が、その立役者である平尾勇治さんによって書かれています。

Hot Pepperの前身は万年赤字事業

誰もが知っているHot Pepperですが、その前身は意外にもリクルートのお荷物事業でした。それは『360°(サンロクマル)』という事業で、特定エリアの領域情報を全て載せるというコンセプトの雑誌です。

平尾さんは、それを4年で全国42版展開、売上げ約300億円、営業利益約100億円の事業に育て上げました。これはまさしくミラクル・ストーリーと呼べるでしょう。『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』は、そのノウハウが詰め込まれた一冊となっています。

Hot Pepperのミラクル・ストーリーに学ぶ3つのポイント

自分なりに、『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』から学ぶことができるポイントを3つに整理してみました。

(1) 選択と集中

ありきたりですが、まずは選択と集中です。

Hot Pepperの前身である『360°(サンロクマル)』は、「街のすべてのコンテンツを掲載する」という壮大なロマンを持った雑誌でした。しかし、その実態は薄っぺらい情報しかない雑誌となってしまっていたのです。

『360°(サンロクマル)』について、平尾さんは以下のように述べています。

結果としてさまざまなコンテンツ台割ができた。が、台割ごとに見ると数件ずつしかお店が掲載できない。読者にとっては比較も選ぶこともできない、中途半端な情報になっていた。

営業先が分散し、営業組織が分散し、商品が分散し、営業ナレッジが分散し、流通設置が分散し、情報コンテンツが分散し、ユーザーも分散した。

(中略)

「360°」=全方位=超多角化となる。

戦略とは絞ることである。絞るとは捨てるということだ。選択と集中の重要さを『サンロクマル』は忘れていた。

その名前を掲げた瞬間に、失敗の道をひた走り始めていたのだ。

この考察から、Hot Pepperは「街のコンテンツ全て」から「飲食・居酒屋」に絞り、また「街の全エリア」から「コア商圏(半径2キロ)」に絞って営業を展開しました。

その結果、コア商圏における飲食・居酒屋という範囲で読者のマインドシェアを獲得することに成功したのです。

(2) 勝つシナリオの横展開はとても重要

この『360°(サンロクマル)』の問題点については、平尾さんが一人で思いついたわけではないようでした。

というのも、『360°(サンロクマル)』の時点で、札幌版だけは黒字化しており、Hot Pepperはその札幌版のノウハウを横展開したものだったからです。

札幌版は広告売上の50%以上が飲食店からであり、中でも居酒屋が単価も高く、安定して連続掲載されていました。また、他の版がクーポンの掲載を必須条件にしていなかったのに対して、札幌版はクーポンの掲載を必須条件にしており、掲載率は90%を超えていたそうです。

その結果として横展開された勝つためのシナリオが以下のものです。

まずは飲食コンテンツに集中する。半径2キロのコア商圏でNTTデータの飲食件数のうち15%を獲得すれば、読者のマインドシェアを獲得できて、流通段階でみんなが自ら喜んで手にとって持ち帰るインフラができる。その流通インフラが確立できれば、一気に効果のある媒体になれる。その後に美容室、キレイ、スクール、リラクゼーション、ショッピングなどのコンテンツに展開を拡大する。そして、街の生活情報誌になる。そのために、半径2キロにある街の飲食コア商圏内の飲食店へ、特に居酒屋へ営業に行く。1/9スペースを3回連続で受注する。1人1日20件の訪問を実行する。

勝つためのシナリオと言いながら、かなり具体的な行動まで落とし込んでいることが分かります。

ここには、平尾さんの「実行」に対する考え方が反映されています。

戦略は正しいはずだけれど、どうしても結果が出ないので、戦略を立て直すということを続けているとしたら、大抵の場合は、その戦略が実行されていないのが、結果が出ない原因だと書かれています。

前線部隊が全力で実行にひた走れるように、その納得感を醸成しつつ、行動レベルまで落とし込むことが、平尾さんの考える「勝つためのシナリオ」なのです。

戦略の大切さは理解され、手間暇やコストがかけられるのに、それを伝えるために手間暇がかけられることはほとんどない。

それは「伝える」意味と価値が十分に理解されていないからだ。伝われば組織メンバーの行動に意志と心が加わり、それが行動や態度に表れて、顧客や読者に伝わり、心をわしづかみにする。それこそが組織力になるのである。

次の項目でも述べますが、平尾さんは最近の風潮から考えると少し特殊に思えるほど、企画と実行部隊を分けて、企画で考えたことをひたすら実行するよう求めます。いじわるな言い方をすると自由を制限するのです。

それは、勝ちパターンの横展開であるからこそ、自信を持って行えたのだろうと思います。

(3) 自由だけがクリエイティビティを生むわけではない

それぞれの版元長(エリアごとの編集長)が自由に誌面を編集できた『360°(サンロクマル)』の時代と比べると、成功していた札幌版の勝ちパターンを強制した『Hot Pepper』はルールでガチガチに制限されているように思えます。

そのことは本書の中でも、以下のように述べられています。

商品企画機能や流通機能を集約して、事業化を急ぐ『ホットペッパー』の新体制は、変化を恐れる人たちにとって中央集権的で冷たく見えたに違いなかった。

しかし、本書を読んでいると、自由だけがクリエイティビティを生むわけではないことが分かります。

実際に、平尾さんは以下のように述べています。

仕組み化は人を育てる。

人を大切にして、人に依存するために仕組み化するのだ。

人のクリエイティブをさらに上位概念に引き上げるために仕組み化がある。

人がより高度な価値をつくり出すために、その価値づくりに集中して価値を磨いていくために仕組み化が行われる。

決して、誰でもできるようにして誰でもいい、人に頼らないものにしてはならない。

新しいシナリオでは、営業マンは日にコア商圏の飲食店20件を訪問して回ることになります。これまでのような自由な裁量はありませんが、その中で発揮されるクリエイティビティを平尾さんはとても大切にしています。

20訪問件数を可能にする時間管理の方法、商談づくりの効率を上げるための営業ツールとトーク、営業商圏を効率よく回るための行動プラン、飛び込み営業で座って商談に持ち込む技法など、成功のノウハウが個々人のなかにたくさん眠っている。

その眠っているノウハウを全員で共有する仕組みが大切になる。

それは、みんながそのノウハウを知りたいと思い、そのノウハウを持っている人がみんなにも伝えたいと素直に思える仕組みだ。ノウハウを発見してきて、その人にしかできないものではなく誰でも真似できるように汎用化する。その人の名を冠にして事業としてそのノウハウを組織全体に宣伝し浸透させる。

菅波葉子の「新規飛び込み福の神営業」

岡田奈々恵の「3年契約受注営業」

吉田菜都子の「何屋プチコン営業」

これらはホットペッパー事業の伝説のナレッジとなった。

それは彼女たちの営業スタンスや方法を全員が目に見える形にすることだ。営業ビデオに収録して版の勉強会に利用したり、『ホットペッパー通信』という社内報で徹底的に検証して共有するのだ。

こうして読んでいると、自由の制限がクリエイティブを制限するわけではないことに気づきます。

企画と実行を分けるというのは、つまり、どのレベルにおいてクリエイティビティを発揮するのかの役割分担をきちんと決めるということのようです。たとえば、『Hot Pepper』では、各版の誌面のあり方などは全て決められていますが、各年、各月の予算は、各版元長が自分で決めて運営するようになっています。

このように役割分担を行うことで、平尾さんによると「誰がバカなのか分かる組織」をつくることが重要だと述べられています。

その他にも参考になる内容がたくさん

『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』には、その他にも参考になる内容がたくさんあります。

いくつか項目だけ書いてみると

・構想力、見えないものを見に行くチカラ

・なぜ負けたかを物語として説明する

・ヨミと意志で業績オペレーションする

興味があれば是非読んでみてください。

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