アツシマンダイβ

学びながら、ゆるくアウトプットします。

SNSマーケティングのコツは広報的な考え方にある。

      2017/10/19

とんでもなく面白いインタビューを見つけました。


このインタビューで語られている「Single, Powerful Content for Multiple Channel」という概念は、僕の理解が間違ってなければ、SNSのマーケティングの真髄を美しく言い表してる一言です。特に、SNSマーケティングにおけるアーンドメディア的な考え方のソリューションとして、大事なのが「たくさんの人が自由に料理できる、ひとつのコンテンツなのだ」という議論は、なるほどとストンと落ちるものがあり、とても感動しました。

この感動が伝わるには、上記インタビューを読んでもらうのが一番いいと思うのですが、この感動の背景には前提条件として2つの考え方の理解が必要だと思いますので、僭越ながら僕なりの理解を説明したいと思います。

SNSマーケティングと従来の広告の違い

まずひとつめに必要なのが、広告枠を買い付ける従来の広告と、広告枠を企画と共感によって稼がなければいけないSNSマーケティングの根本的な違いに対する理解です。

テレビや雑誌の広告は枠を買う(ペイドメディア)

テレビや新聞、雑誌の広告は、大雑把に言うと以下のようなものでした。

「こちらの広告枠はX百円になります。YY万人に届くことが想定されます。属性としては、男性で30代〜40代の会社員が多いです。」

「よし、それならうちの商品のターゲットと合うし、買おう。」

「クリエイティブはどうしましょう。」

「うちの商品の強みは〇〇なので、それが伝わるようにしたい。」

「それでは、キャッチコピーは”ホニャララララ”として、ターゲット層に人気のあるタレントのダレダレさんを使いましょう。」

実際はここまで適当ではないですが、基本は「お金を払えば、枠が買えて、想定される視聴者に届く。そこに伝えたいことをキャッチコピーやイメージにして盛り込んだコンテンツを流す」というものです。

SNSマーケティングは広報的な活動で枠を手に入れる(アーンドメディア)

一方で、SNSのマーケティングにおいては、枠がどれだけ手に入るかは、アカウントを持ってる人たちがどれだけ投稿・シェアしてくれるかにかかってくるのが最大の違いです。

たとえば10,000人のフォロワーを持っている人と、5,000人のフォロワーを持っている人がシェアしてくれれば、15,000人のフォロワーに対して情報を発信できることになります。

その二人が発信してくれればいいのであれば、お金を払って投稿してもらった方が早いかもしれません。しかし、世の中にはもっとたくさんのアカウント保有者がいて、もっとたくさんのフォロワーがいます。「自社アカウントのフォロワーを増やす」、「フォロワーがたくさんいる有名人に発信してもらう」なんてのは、たくさんの人が発信してくれることと比べると小さな次元の話になります。

そういう意味では、SNSにおけるマーケティング活動は、興味を持ってもらって記事にしてもらうという広報活動にイメージは近いということです。

こうしたマーケティング活動を、広告枠や評判を「買う」のではなく「稼ぐ」ということで、「アーンドメディア(Earned Media)」と呼んでいます。この考え方は、日本でもアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦さんが積極的に発信されています。

アーンドメディアは評判を獲得する(Earn)というイメージで、いわゆるクチコミやPR露出のことになります。よくアーンドメディアをソーシャルメディアアカウントのことだと定義されている文献を見ることがありますが、個人的にはそれはあくまでオウンドメディアとして定義する方が良いと考えています。Webサイトも、メルマガも、Twitterアカウントも、Facebookページも、LINEアカウントも、企業自らがコントロールできるメディアという意味ではオウンドメディアと定義した方がシンプルだからです。ここでのアーンドメディアはあくまで企業以外の人たちの投稿と考えてください。自社でコントロールできないメディアというのがポイントです。

(「クチコミやオウンドメディアに、広告と全く同じ役割を期待するのはやめるべき」より)

繰り返しになりますが、SNSマーケティングにおいては、すべてのアカウントをチャネル(あるいはプチメデイア)だと考えて、そのアカウントの保有者の方々(プチ編集者の方々)にコンテンツを発信してもらうために広報活動を展開していくことで、結果として広告枠を稼ぐことができるというのが、1つ目のポイントになります。

多くのアカウントで投稿・シェアしてもらうためには

次に、たくさんのアカウントに投稿・シェアしてもらいつつ、自社のPRという目的を果たすためには、どのような仕掛けをすればいいかということを考える必要があります。

SNSマーケティングのトレンドの先端は、LINEスタンプにしろ、インスタグラマーやユーチューバーを意識したマーケティングにしろ、今まさにここであるわけです。今や2010年頃のような「自社アカウントのフォロワーを増やす」とかではないわけです。

おもしろコンテンツでバズらせるというアプローチ

さて、たくさんのアカウントに発信してもらうためには、とにかくバズるコンテンツを作ればいいということで、マーケティングを担当する部署の現場では、何かバズってるアイデアはないかということで、日々バズっているコンテンツを見つけて、ああだこうだと議論をしているわけです。

という状況なので、当然バズ屋さんのような商売もあります。

代表例はLIGさんデイリーポータルさんでしょう。LIGさんやデイリーポータルさんは、自社で毎日おもしろいコンテンツを作って、自社メディア(オウンドメディア)で発信しています。そのオウンドメディアの読者に対して、広告主の企業が伝えたいことを、普段のおもしろテイストで作ったおもしろ記事広告を通じて伝えるというソリューションなわけです。

これは、ネットマーケティング界隈のツイッターを使っているような属性の人たち(クラスタ)を読者かつインフルエンサーとしてLIGさんやデイリーポータルさんが集めているわけで、そこに訴求することで、その読者の人たちが、またインフルエンサーとして情報を発信してくれることで広がっていくわけです。読者に一方的に情報を送りつけて終わりの従来の広告枠とは似て非なるものだということが分かります。

とはいえ、なんでもかんでもおもしろ広告にすればいいわけではありません。商品によっては、おもしろおかしく伝えたのではブランドイメージが伝わらないというものもあるからです。しかし、インフルエンサーを抱えて、インフルエンサーが投稿・シェアしやすいコンテンツを提供するという基本ルールがここにはあります。

それぞれのアカウントには、それぞれのメディアポリシーがある

もう少し俯瞰的にSNSマーケティングを考えてみます。

まずは、自社についての情報が広がってほしい層(クラスタ)があるはずです。ツイッターでも起業家クラスタ、不動産クラスタ、エンジニアクラスタ、はてなクラスタ、ニコニコ動画クラスタなど、様々なクラスタがあります。

そして、それぞれのクラスタでは、そこに影響力を持つアカウントがたくさんあります。影響力はあまりない小さなアカウントもたくさんありますが、これもたくさんあるのでバカには出来ません。実際、有名人に投稿してもらって終わりだと広がりには限界があります。なので、できるだけたくさんのアカウントに投稿してもらいたいわけです。

ここで大事になってくるのが、ひとつひとつのアカウントには、それぞれの保有者がいて、それぞれの価値観があり、それぞれのメディアポリシーがあるということです。

それぞれのアカウントの持ち主は人間であり、「自分がフォロワーにどういう人間だと見られたい」という個人的な欲望もあれば、「こういう情報を発信しているから、みんながフォローしてくれているので、そのイメージと異なる内容はポストできない」という自分のブランドを理解した上での投稿に関する判断もあります。

この傾向は、おそらくツイッターではやや薄く、インスタグラムではとびきりに強いです。

加えて2016年を振り返ると多様化のリスクが急激に上がっています。パッケージ化されたデジタルギフト、例えば体験者に配布する5秒の動画ファイルなどが企業の思惑通りアップされない確率も上がっている。体験ブースには入るものの用意したカメラでなく自身のスマホで撮影したい子もいれば、新機能のインスタストーリーでラフにアップしたい子もいます。

ルイ・ヴィトンやグッチ、GUの仕掛け人が語る「SNS戦略に悩む時点で周回遅れ」より)

以下は、インスタグラマーを呼んだパネルディスカッションの記事ですが、インスタグラマーがいかに「編集者」的なものの考え方をしているかが伝わると思います。この記事もマーケティング担当者は必読だと思います。

福田:ここからはぶっちゃけトークをしましょう!企業のプロモーションとして、みなさんのインスタグラムとかTwitterに投稿してほしいという依頼がくる時があるかと思います。単刀直入に聞きますが、やりづらい依頼とかってありますか?

長谷川:先に断っておきますが、案件はなんでも嬉しいです!だけど、「この写真を絶対に使ってね」とか、「加工なしでお願いします」など条件を提示されると、どう頑張ってもその投稿だけ“嘘くさい”感じが強くなりますね。

福田:さきほどからお話している「世界観」ですね。自分の世界観を作ることが難しくなってしまう。

point2

長谷川:私の世界観が崩れるが本当に嫌で・・・。正直、条件が厳しい依頼を受けたあとはフォロワーがめちゃくちゃ減るし、今まで見てくれた人が「やっぱりこういう投稿するんだ、フォローするのやめよう」ってなるのが悲しいです。

(kakeru「インスタグラマーと企業は、どう付き合っていけばいいの?」より)

いずれにせよ、それぞれのアカウントが、どのような情報を、どのような切り口で発信してくれるかは、広告主側ではコントロールできないのです。これが2つ目のポイントです。

そのことをメインの題材に添えたのが、LINE執行役の田端信太郎さんと、本田哲也さんの共著『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』です。

今回冒頭で紹介したナカヤマン。さんの記事は、普段の仕事の内容だということもあって、もう少し踏み込んでいます。

自由な編集に耐えうる、ひとつのコンテンツ

ここまで考えてきたことを振り返ると、何も制約がなければ、もっともいいのは、投稿してくれるアカウントひとつひとつに対して、そのアカウントの保有者の価値観やメディアポリシーを理解した上で、投稿しやすい最適なコンテンツを用意するというものです。

これは相手が大きなメディアで、自分が会社の広報担当だったら、当たり前のように行っていることです。それぞれのメディアには独自のメディアポリシーやカラーがあり、それに合わせて、1件1件、個別の取材に応じます。

しかし、SNSマーケティングの場合は、当然アカウントひとつひとつに対して、個別のコンテンツを用意するような時間と予算が降ってくるわけがありません。

そこで、ようやく冒頭の「Single, Powerful Content for Multiple Channel(複数のチャネルに向けた、パワフルなひとつのコンテンツ)」という考え方が登場するわけです!やっとここまで来た!

たくさんの人たちが投稿しやすい(=その人たちが、自分のアカウントのイメージやメディアポリシーに従って、自由に編集して投稿することができる)、つまり多様な編集に耐えうる、使いやすいコンテンツを企画することが大事だということなのです。

以前、証券会社のマーケティングをしていたときに、従来の「四季報プレゼントキャンペーン」を「好きな銘柄をつぶやいて、四季報ゲットキャンペーン」に変えてみたところ、あっという間に1000ツイートを超えました。これは、企画のレベルは記事中のGUCCIの仕掛けとは全然違いますが、基本ルールは同じで、「好きな銘柄をつぶやこう!」というコンテンツ設計が、ツイッターの投資クラスタの人たちにとって自己表現しやすくてハマったのが良かったのだと思います。

アカウントひとつひとつを全て個別のチャネルだと見るのが出発点!

ということで、上記のインタビュー記事を読んでいると、またマーケティングをしたくなってきます(笑)。

どのクラスタに届けたいのか、そのクラスタはどういうことをツイートしているのか、どんなコンテンツならそのクラスタの人たちが投稿・シェアしてくれるのか、編集に耐えうるような遊びはどうやって設けておけばいいのか、その中でもどうやって自社のPRという目的を達成すればいいのか。

アーンドメディアは考えることがたくさんありますが、アカウントひとつひとつを全て個別のチャネル(プチメディア)だと見るのが出発点だということです。

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