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非リカーディアン型の政府で発生するハイパーインフレ

      2017/11/26

またまた日経ヴェリタスに面白い記事が乗っていました。

BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんが書かれた”「シムズ理論」を憂う”という記事です。

浜田宏一教授が認めた量的緩和の限界

量的緩和とは

アベノミクス以降の日本では、日銀の黒田総裁のもとで貨幣数量説に基づいて、マネタリーベースを増やすために量的緩和が行われてきました。

ここで量的緩和を振り返っておきたいと思います。

まず、貨幣数量説とは、「社会に流通している貨幣の総量とその流通速度が物価の水準を決定している」(Wikipediaより)という仮説です。たくさんお金がでまわっていれば物価は上がっていくし、あまりお金が出回っていなければ物価は下がっていくということです。

通常、中央銀行は、ある程度物価を安定させながらマイルドなインフレを目指しますので、デフレ時には経済をインフレ気味に持っていくために刺激する必要があります。その方法はいくつかあります。

一つは、公定歩合の上下を通じて、市中金利に影響を与える方法で、金利を下げることで、企業がお金を借りて投資しやすくするというものです。企業がお金を借りて投資をすることで、お金が市場に出回ります。

もう一つは、日銀が国債などを買い取って、どんどん現金を金融機関などに提供していく方法です。そうすることで、金融機関はさらにお金を貸し出しやすくなります。これが量的緩和と呼ばれていた手法です。

黒田総裁は、量的緩和を行うだけでなく、特にこれを大規模で行い、派手に演出することで、消費者の心理に働きかけ、インフレマインドに心理が転換することを目指しました。

ゼロ金利下では効果がない

しかし、量的緩和についても、ゼロ金利のもとでは効果がないという議論がなされていました。

特に、金利がゼロでも借りる人がいない局面で、市中銀行が貸し出せるお金の量を増やしたところで、需要がないからどうしようもないというものです。黒田総裁は、マイナス金利によって、市中銀行がお金を貸し出すインセンティブを高めるなどの方策を取りましたが、これは他方で銀行のバランスシートを損ねるなど、混乱も巻き起こしました。

アベノミクスのブレーンであったイエール大学の浜田宏一名誉教授は、今週号の日経ヴェリタスによると、昨年11月の日経新聞のインタビューで「金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなる」と回答し、今後は財政政策が必要性になると述べたそうです。

財政政策の種類と効果

さて、財政政策といっても2種類あります。

リカーディアン型政府は財政規律を重んじる

ひとつは、リカーディアン型政府です。

これは政府の収入と支出の財政規律を重んじるタイプの財政を行います。つまり財源が十分でなくなれば増税や緊縮財政によって、規律を保とうとするわけです。日本だと財務省の主張がリカーディアン型政府的であると言えるでしょう。

リカーディアン型政府のもとでは、物価を安定しやすいでしょう。

しかし、たとえ財政支出をしても、将来の増税や緊縮財政が同時に脳裏によぎるため、経済刺激効果が弱いといいます。

非リカーディアン型政府はインフレで借金を減らす

もうひとつは、非リカーディアン型政府です。

非リカーディアン型政府は、増税や緊縮財政によってお金を返すことを想定しておらず、インフレをもって借金を減らすことを前提とします。借金が1兆円なら、1兆円の価値を減らしてしまえばいいという考え方です。

リカーディアン型政府と違い、財政出動で出回ったお金は、後々に回収されることがないので、消費者は支出を増やすのではないかと言われています。

非リカーディアン型政府のリスク

非リカーディアン型政府には大きなリスクもつきまといます。

「非リカーディアン」なんていうとかっこいいですが、要は中央銀行まで巻き込んで放漫財政をするということです。それも一度だけえいやと支出を増やすのであればいいですが、一度中央銀行がインフレ誘導することで借金を減らすなんて術を覚えてしまえば、選挙のことばかり気にしている政治家が節度のある国家財政を保てるはずがあるだろうかと、日経ヴェリタスでは指摘されています。行き着くところ、つまりハイパーインフレまで行ってしまうのではないかということです。

日経ヴェリタスでは、河野さんは以下のように綴られています。

歴史を振り返ると、時として高インフレが発生した際、原因は金融政策ではなく放漫財政ということがあった。特に中央銀行制度が確立される前は放漫財政が引き金で、当初は投資ブームや金融バブルが生じ、その後、財政危機と共に高率のインフレが観測された。

そもそもは放漫財政とハイパーインフレで消費者の生活をズタズタにしないために、中央銀行は国家と切り離されて、物価の安定と雇用の最大化を目的に、独立して運営されているわけです。政府の借金が増えて、金利もあげられない、インフレで減らすしかない、なんていうのは本末転倒だという意見は正しいでしょう。

その禁断の術を使ってまで、デフレ脱却を目指すかということが問われていくことになります。

ちなみに、財政出動論者といえばポール・クルーグマンがいます。興味がある方はぜひ読んでみてください。

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