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民主政は何度でも排他的な政治を復活させる。『帰ってきたヒトラー』を見ました。

      2017/11/26

予告編のときから気になっていたコメディ映画、『帰ってきたヒトラー』を見ました。

『帰ってきたヒトラー』

原作はドイツのコメディ

原作はエルランゲン大学で歴史と政治を学んだタブロイド紙のジャーナリストであるティメール・ウェルメシュが書いたコメディ小説です。

この小説がドイツで130万部の異例のヒットとなり旋風を巻き起こした理由は、ひとえにヒトラーを題材として扱ったことが大きいと思います。

というのも、ドイツでは、ヒトラーやナチスはタブー視されており、僕も知らなかったのですが、彼の『我が闘争』なんかは発行禁止になっています。

歴史上の人物のタイムスリップものは小説の題材として珍しくないが、それがヒトラーとなると話は別である。ドイツにおいてヒトラーとナチズムは今もタブーな面があるからだ。彼の著作『わが闘争』は発禁、ナチス礼賛も法律で禁止されている。こうした制約下で本書が出版可能になったのは、ヒトラーを戯画化した風刺小説だからである。

独で130万部、38か国で翻訳された小説『帰ってきたヒトラー』

さて、この小説では、ヒトラーが人間らしく、魅力的に描かれていていたことでも注目を浴びました。そのような批評について、著者は以下のように述べています。

ヒトラーをあえて人間的に魅力的に描いたことで著者は批判を受けるが、こう反論する。「人々の多くは彼を一種の怪物として解釈してきた。だがそこには人間アドルフ・ヒトラーに人を引きつける力があったという視点が欠けている。人々は、気の触れた男を選んだりしない」

独で130万部、38か国で翻訳された小説『帰ってきたヒトラー』

映画版『帰ってきたヒトラー』

映画版の『帰ってきたヒトラー』は原作のコンセプトをそのまま用いつつ、多くの場面で、ヒトラーに扮した主演男優のオリヴァー・マスッチが街中で市民と実際にアドリブで対話する様子を用いた、セミ・ドキュメンタリーの形式がとられています。

ーー劇中では、ドイツ市街にいる人々にインタビューをする場面や料理番組に乗り込んでいくシーンなどがドキュメンタリー形式で映し出されていましたね。

マスッチ:ずっとスタジオの中で演技をしていたわけじゃないからね。スタジオ以外でも、なるべく多くの時間をヒトラーの格好で過ごしたよ。ヒトラーの格好で街中に出ると大騒ぎになってね。そうやって人々が集まってくる中で、ヒトラーとしての発言をしてみるんだ。原発についてや政治家についての提言をね。人々の不安を煽るようなことをたくさん言って、どんな反応が返ってくるのかを試していたんだ。

ヒトラーの格好にドイツ市民はどう反応したか? 『帰ってきたヒトラー』主演俳優インタビュー

排他的な政治は何度でも復活する

さて、本映画はコメディ映画なわけですが、現在のEUの難民問題や、そこから繋がったイギリスの国民投票(結果は離脱が上回りました)、さらにはアメリカのトランプ大統領出現の可能性などを考えると、途中からヘラヘラと笑っているわけにもいかなくなってきます。というのも、この映画で描かれるヒトラーは、あまりにも賢く、あまりにも簡単に大衆をロックし、あまりにもアンストッパブルだからです。

そして、その映像が(一部とはいえ)台本なしのリアルなドキュメンタリーだと考えると、人類が乗り越えたと思っていた歴史は、いつ繰り返してもおかしくないということが分かってしまいます。

先述のマスッチのインタビューも示唆に富んでします。

ーー本作でも、外国人労働者の問題が描かれており、外国人の流入を抑えることに肯定的な姿勢を表していた人々が映し出されていましたね。

マスッチ:どんなに困難な状況に陥ったとしても、柵で人の流入を抑えてはいけない。柵があればそれを乗り越える人が出てきて、それを防ぐために銃を手に取る人もいるだろう。先進国は、豊かな生活がなにかの犠牲の上でなりたっていることをわかっていながら、なにも準備をしてこなかったため、物理的な方法で難民を抑止する羽目になった。しかし、そんなことでは根本的な問題は解決できるわけがない。自国に受け入れるのか、もしくは彼らの祖国で対応するのか、どちらにせよ政治的な決断が必要だと、強く感じたよ。

ヒトラーの格好にドイツ市民はどう反応したか? 『帰ってきたヒトラー』主演俳優インタビュー

ヒトラーを現代にあわせて、人間的に魅力的に描いた、この小説と映画の挑戦は、良識ある大人にとって、現代にヒトラー的な人物が現れる可能性に思いを馳せ、気を引き締める内容になっている一方で、ヒトラーをカッコいいと思う人間が増えるであろう点と裏表だと思います。

他民族やダイバーシティへの寛容性を身に着け、かつ周囲の人たちへの不満が自分たちの中に生まれないように、自分たち自身の競争力をあげて生活水準を保つ努力をすることは、これからの世界で良識ある個人として生きていくうえで、とても重要だと再認識させられました。

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